love タブーだった『SLAM DUNK』の人気の秘密
1990年から『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『SLAM DUNK』は、コミックスの累計発行部数1億冊を突破したバスケマンガの金字塔。歴代最高部数653万部を記録してギネスブックにも登録された“ジャンプ黄金時代”を支えた作品の一つである。
そんな大人気マンガは連載スタート前に、「ヒットしない可能性」を指摘されていた。単行本31巻のあとがきによれば、「『バスケットボールはこの世界では一つのタブーとされている』と編集者から何度も聞かされた」とか。そんな“常識”を打ち破り、大ヒットを飛ばした『SLAM DUNK』の魅力に迫ってみたい。
『SLAM DUNK』は、バスケット初心者の桜木花道が徐々に才能を開花させ、仲間と共に全国制覇を目指すというストーリー。桜木が在籍する湘北高校のメンバーはもちろん魅力的だが、17年連続インターハイ出場の「神奈川の王者」海南大附属、190cm以上の大型選手を擁する翔陽、積極的なラフプレーで戦う豊玉、高校バスケット界の頂点に立つ山王工業など個性的な対戦相手も魅力の一つである。
20代男女911名に「『SLAM DUNK』で湘北高校と対戦した好きなキャラは?」という※アンケートを実施したところ、1位は31.6%の支持を得て仙道彰、続いて14.1%で魚住純という結果になった。どちらも陵南の選手であり、湘北主将の赤木は陵南主将の魚住を、桜木と流川は陵南のエース仙道をそれぞれライバルとして意識している。その結果、火花が散るように両者の心理的、技術的な戦いもヒートアップし、物語の盛り上がりに花を添えた。つまり、陵南というライバル校が湘北を輝かせたといえる。
天才型にも努力型にも用意された活躍のフィールド陵南の田岡監督が東京からスカウトしてきた仙道は、誰もが認める天才的なプレーヤーである。しかし、気分にムラがあり、練習をサボるような面も持っている。対して魚住は1年生時に「ただでかいだけ」と陰口をたたかれたほどの落ちこぼれ選手だったが、並々ならぬ練習を続け、努力した結果のし上がっていった。ライバルの赤木に勝つため、苦手だったフットワークを鍛え直したというエピソードも魚住が努力型であることを印象づける。
湘北のメインキャラクターである流川と桜木も、仙道と魚住のように天才型と努力型の対比が行われているようにみえる。中学時代からスタープレーヤーだった流川は、1年生ながら最強王者・山王工業のエース沢北と「同等の実力」と称されるほどの優秀な選手。一方、「天才ですから!!」が口癖の桜木は、高い運動能力に恵まれているものの、バスケに関してはド素人。監督の安西先生からは「彼(流川)の3倍努力しないと高校生のうちには追いつけない」と言われていた。そこで地道な基礎練習の日々を重ね、徐々に才能を開花させていく。
最後まであきらめない美学『SLAM DUNK』にはほかにも1日500本のシューティング練習を欠かさない海南大附属の神ほか努力型のキャラが多く登場する。その努力型の代表選手といえば、メガネ君こと木暮公延だろう。桜木のようなジャンプ力やスタミナもなく、赤木のように長身でもなく、桜木と流川の入部後はスタメンからもはずれている。
それでも腐ることなく努力を続け、チームのために働いたメガネ君は誰よりも輝いて見える。インターハイ予選決勝リーグ最終戦でシュートを決めた瞬間、メガネ君の3年間の努力を思って涙した読者も多いことだろう。湘北の不安要因と決め付けていた陵南・田岡監督の「あいつも3年間がんばってきた男なんだ。侮ってはいけなかった」というセリフも印象深い。
このメガネ君のように、最後まであきらめない美学が貫かれていることが『SLAM DUNK』の真の魅力ではないだろうか。読者もそれを感じていたからこそ、安西先生の「あきらめたらそこで試合終了だよ」という言葉が“スラダン”名言として取り上げられるのだろう。
主人公の桜木花道も、高校バスケ界の王者として君臨する山王工業高校との試合で、あきらめない心を見せた。なかなかパスをくれなかった流川からのボールを受け取った桜木は、ラスト1秒でシュートを放つ。しかもこのとき彼が決めたシュートは、豪快なスラムダンクではなく、華やかさのない普通のシュートだった。
読者の中には「最後はスラムダンクで決めてほしかった」という者もいたが、ここで桜木が普通のシュートを選んだ意味は大きい。ワガママで自分勝手だった桜木は、自分の「天才」性を見せることよりも、チームのために、仲間のために勝利することを選んだのだ。大切な仲間がいるから、あきらめずに頑張ることができる。『SLAM DUNK』は、あきらめない心と仲間の素晴らしさを教えてくれた。
文●塩澤真樹(C-side)
※引用アンケート調査時期:2011年5月24日~5月31日
調査対象:COBS ONLINE会員
調査数:男女911名
調査方法:インターネットログイン式アンケート
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