business 南キャン・山里亮太が語る「AKBのブランディング力」
数あるアイドルグループの中で、AKB48がこれだけ注目を集めている理由は、いったいどこにあるのか。芸能界随一のAKBフリークとして知られる、南海キャディーズの山里亮太さんによれば、個々のメンバーが持つ「ブランド戦略」に、その秘密が隠されているようだ。
「例えば、アーティスト路線で自分磨きを続けている板野友美ちゃんには女性ファンが多いし、大好きなアニメについて熱く語る渡辺麻友ちゃんは、アキバ系のファンを共感させてくれる。AKBのメンバーは自分の個性を最大限に発揮するための努力を惜しまないので、それが結果としてファンの裾野を広げているんだと思います」
もともとアイドルとしてのポテンシャルが高いという両名でさえ、現状のスキルに加えて自分だけの武器を見つけ、プラスアルファのブランドを確立している。
「お笑いの世界にも『一発屋』と呼ばれてしまう人がいますけど、アイドルも教科書通りに歌って踊っているだけでは、活躍の場が限られてしまう。アイドルなのにアーティスト志向、アイドルなのにオタク……というふうに、『二本目の刀』」を持っているメンバーは、やっぱり強いですよね。ビジネスに例えると、本職の営業だけじゃなく、企画もできるぞ、みたいな」
一方で、「全てのメンバーが、初めから抜群の才能や個性を持っていたわけではないと思う」とも。
「例えば、チームAのキャプテンを務める『たかみな』(高橋みなみ)は、もしかしたらアイドルとしてずば抜けた部分はないかもしれない。でも、泥臭いほどに努力をしている姿と、現場のスタッフが「どんなに忙しくても、いつも絶対に笑顔を忘れない」と驚くほどのアイドル魂で、いまやファンからも尊敬される、AKB48の象徴的な存在になりました。これも立派なブランドですよね」
歌唱力やダンスの技術、アイドルらしいルックスやプロポーションで、自分が敵わないメンバーがいる――ビジネスの現場に置き換えても、周りの人と自分を比較して「この分野では、この人には敵わない」と打ちひしがれることは、誰にでもあるだろう。
「AKBのトップで活躍するメンバーは、多かれ少なかれそんな葛藤を乗り越えてきたはず」と分析する。
「彼女たちは、自分の弱点を知って凹むのではなくて、『それなら、自分はどうやって目立てばいいんだろう』、『どうやってファンを楽しませよう』と必死で考えるんでしょうね。劇場に足を運んでいると、メンバーのパフォーマンスやトークが日々磨かれて、個性的になっていくのがよく分かるんです」
そのひたむきな姿勢には、現時点で必ずしも卓越した能力やスキルが身についていない、若手ビジネスパーソンが学ぶべきところも大きいかもしれない。
自身もお笑いの世界で一歩抜け出すために、意識的にキャラクター作りをしてきたという。AKBメンバーのセルフブランディングに、共感する部分もあるという。
「どんな業界でも、人より目立つには、同じ土俵で戦うライバルが少ない方向性を打ち出した方がいい。南海キャンディーズは、まさにそんなコンビ。『何を考えているのか分からない大女と、胡散臭いメガネ男』というだけで、競争相手はかなり少ない(笑)。AKBはメンバー間で、自然とそういう『すみ分け』ができていると思います。だからファンの取り合いにならず、足りない部分を補い合って、強いグループになっているんじゃなかな」
これはブランドのマーケティングにおける「差別化」や「優位性」にあたる。さらに注目すべきは、「メンバーが自分のキャラクターをよく理解して、自信を持っていること」と山ちゃん。いくら緻密なブランディングを行っても、自信がなければそのキャラクターはすぐに崩れてしまうと言う。
「僕はピンで何か新しいことをやろうと思って『イタリア人』というキャラクターを演じたことがあったんです。でもコレ、コンセプトがハッキリしていなかったから、2回目の舞台で早くもスベりまくり(笑)。その点、AKBのメンバーは劇場公演で、それぞれがキャッチフレーズとともに自己紹介をして、キャラクターを定着させる努力をしていて……。これが自信や自分の再確認につながっているんでしょうね」
メンバーそれぞれが自分だけのブランドイメージを確立し、そのことが組織を大きく成長させる――エンターテインメント業界を席巻するアイドルグループ=AKB48は、会社とビジネスパーソンの理想的な関係を体現しているといえるかもしれない。
●ナビゲーター
1977年生まれ。2003年に“しずちゃん”こと山崎静代と南海キャンディーズを結成。お笑い界に旋風を巻き起こし、TBSラジオ水曜JUNK山里亮太の不毛な議論のパーソナリティを努めるなど多ジャンルで活動中。自他共に認める芸能界一のAKB48フリークで、鋭いアイドル評論にも定評がある。3月30日発売のDVD「アメトーーク!」の「気にしすぎ芸人」に出演。
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