半年でなぜランステが名所になったのか
雑誌『ランナーズ』をはじめ、多方面のメディアで盛んに紹介されていることもあり、九段下にある「ランナーズステーション(以下ランステ)」には会員ユーザーばかりではなく、毎週末には全国から皇居ランを楽しみにランナーが押し寄せる。今や、ランニング業界で注目の的となりつつある「ランステ」だが、その内部は案外シンプルなものだ。受付、ロビー、ロッカー、シャワールーム、お手洗い。主な機能はそのぐらい。まさに皇居ランへと出かけていくためだけの、シンプルな施設だ。しかしこの施設が、オープンわずか半年の間で月間3,000人以上の利用者を集める名所となった。そこにはどんな理由があったのだろうか?
トライして分かるいろんな不便
ランニングをしたことがある人ならピンとくるかもしれないけれど、ランニングはシンプルで場所を問わないスポーツゆえに生じる不便が多い。「荷物はどこに置いておく?」、「汗をかいたらシャワーをどうする」、「気軽に走れるコースは?」など、いざ始めてみようと思えば想像してなかった面倒くささが顔を出す。ランステをはじめとする各施設が簡便なものながら、ランナーのハートをつかんだのは、こうした小さな問題への「解」を提示したからに他ならない。皇居周辺では、これまで(今も)協力的な銭湯がロッカー等を提供しランナーを支えてきたが、これは収容数にも問題があるし、何より知る人ぞ知る「裏技」的なニュアンスが強かった。
日本のスポーツ環境はまだまだ
ランニングに限らず、スポーツを行う上で見過ごされがちな小さな問題は数多い。公共施設は施設が貧弱、グラウンドが少ない、民間は値段が高かったり、スポーツクラブは面白みに欠けたり……。保険制度の改定で、メタボ対策が義務化されても、面倒でつまらなければ、スポーツは健康面で国民に貢献することができないだろう。
もちろん各自治体は指定管理者制を導入したりして改善意識にあついし、民間のクラブも改革に熱心だ。日頃から情熱的にスポーツを楽しんでいる人にしてみれば、やらない者の言い訳に見えるかもしれない。けれど、まだまだネガティブな理由に尽きないのが今の日本の状況だ。
日本のスポーツを明るく
ランステは皇居ランというブランドに乗り、さらに東京マラソンというブームの牽引車にひかれることで、スポーツをやらない人の心の隙間に上手くリーチした。もちろん同社も初心者向けペースランなど、ランニングクラブと共同でさまざまな企画を行い、飽きさせない工夫を施し、ランニングファンの拡大に努める。同社取締役の浅川氏によれば、ランステの収支は「トントンぐらい。儲かっているとは言い切れない」程度とのこと。今後、多店舗展開も考慮の範囲内にはあるらしい。ランニングのみならず、日本中にさまざまなスポーツファンの小さな悩みを解消するサービスが増え、廃校の活用・公園の開放などで、スポーツに興じられる場所が増えていけば、こうしたサービスの採算性も向上し、日本のスポーツ界は今以上に明るさを増すだろう。
(2008年3月19日)
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安藤崇(あんどう・たかし)
紅茶にはまって大学を中退した後、編集プロダクションに勤務。ライターとして医薬業界を主に、メディアの陽があたりづらい市井のビジネスパーソンを数多く取材。その後、心おきなく夜中や平日のスポーツ観戦を楽しむため、フリーライターとして独立。
現在はドラッグストアを初めとした流通業界の取材記事などに強みを発揮する傍ら、インターネットや雑誌媒体で、スポーツビジネスにまつわるコンテンツを発表している。 |
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