ハッピー起業ライフ 「会社員経験を活かす若手社長たち」

こんにちは、滝岡幸子です。今回は、1個10円のまんじゅうを製造販売している武長栄治さんをご紹介します。飲食業を営む母親を見て育ち、武長さんも自然と飲食業界で働くようになりました。「誰でも手が届くおいしい商品を提供し、お客さんの心を豊かにしたい」と思っていたとき、10円まんじゅうを販売する事業に出会いました。

 
   
第165回「1個10円のまんじゅうを製造・販売」
武長栄治さん

武長栄治(たけなが えいじ)
1個10円の蒸したてまんじゅう店「和ふ庵」を運営
株式会社ジャパンフードシステム 代表取締役

1978年生まれ。ボストンの大学に留学中、和食レストランでアルバイトを経験。大学卒業後、スターバックスコーヒージャパン株式会社に入社し、2年半『スターバックス』の店舗で働く。2004年12月、1個10円の蒸したてまんじゅう店「和ふ庵」を運営する有限会社ジャパンフードシステムの立ち上げに参画し、2005年8月、同社代表取締役に就任。同年12月、株式会社に組織変更した。

 

「和ふ庵」 http://www.10yen-manju.com/

「手軽な和菓子を提供したい」

 1個10円の蒸したてまんじゅうを販売する店「和ふ庵」を運営する株式会社ジャパンフードシステム代表の武長栄治さん。10円まんじゅうは黒糖が香るもちもちとした生地と甘いあんがマッチし、“1個10円”の価格設定も話題となって、幅広い年齢層から人気を集めている。20個入りセットを買っても200円程度で買いやすく、何箱も買って友人に配るお客さんも多いそうだ。「日本の伝統である和菓子を、手軽な価格で提供することが社会貢献になると思ったのです」。

 武長さんは飲食業を営む母親の姿を見て、サービス業の真髄を知った。母の店には近所の経営者が多く訪れ、武長さんは小さいころから社長達の夢を聞いて育った。「その夢を語る姿がカッコ良くて、僕も将来社長になりたいと思うようになりました」。また武長さんが高校生のとき、1歳上の兄が飲食店を始めた。「兄が夢を追いかける姿を見て、僕も事業がしたいという気持ちが高ぶりました」。

仲間を大切にした学生時代

 武長さんは中学から全寮制中高一貫校に入学し、16人部屋の寮生活を送った。チームワークを重んじる精神はそのころからあったようだ。寮の部屋替えで、いじめを受けた同級生がどの部屋に入ることもできなかった。それにショックを受けた武長さんは、「根はいい奴だから、部屋に入れてあげよう」とルームメイト達を説得して回った。嫌がっていたルームメイトに根気良く話をした結果、全員がOKし、その彼は仲間外れにならずに済んだ。「自分の考えが正しいと思えば、徹底的に相手に伝えて分かってもらう」という武長さんの性格をよく表すエピソードだ。

アメリカ留学中、レストランでアルバイト

 中学生活で学歴社会や受験勉強に矛盾を感じた武長さんは、アメリカへの留学に憧れた。帰国子女の友人から、アメリカの学校は勉強だけでなくボランティアやクラブ活動を重んじると聞いて魅力を感じたのだ。そして留学を決意した武長さんは、高校からインターナショナルスクールに編入して英語を勉強した。

 そして念願通り、アメリカボストンにある大学に留学。ホテルやレストランの接客や経営について学ぶホスピタリティ学科に進んだ。

 学業の傍ら、ボストンで一番人気だった和食レストラン「GINZA」でアルバイトもスタート。「お客さんに『接客が良かったよ』、『おいしかったよ』と喜んでもらうと本当に嬉しくて、アルバイトにどっぷりはまりました」。店長補佐として、従業員全員をまとめることや経営マネジメントに関わり、飲食店経営の楽しさにのめり込んだ。「飲食業の魅力は、こちらの対応ひとつでお客さんが笑顔になり、努力の成果が分かりやすいことです。飲食業は誰でもゼロから始められる面白い商売だと思いました」。

スターバックスに就職

 大学卒業後、帰国してスターバックスコーヒージャパン株式会社に入社した。同社を就職先に選んだきっかけは、大学時代に毎朝飲んだコーヒー。武長さんは同社が米国にコーヒー文化を根付かせ、皆に支持されて店舗数を増やしたことに憧れを抱いていた。入社後、『スターバックス』の店舗で働いた。

 働きはじめて3年近く経ったころ、以前からの知り合いで和食レストランを経営する株式会社ミックフーズの渡辺社長に「今、店舗の売上が低下して危機状況にある。お前と一緒に会社を立ち直らせたい」と声をかけられた。武長さんはその熱意に感激し、社長のすぐそばで経営に関われることにも魅力を感じて、同社への転職を決意した。

10円まんじゅうとの出会い

 転職後は和食レストランの店員からスタートし、その後和食割烹とカラオケ店の店長を兼務した。「そろそろ新しい事業に関わりたい」と思い始めたころ、渡辺社長と和菓子製造に詳しい株式会社ケー・イー食品開発の大木社長から「低価格で食べやすい和菓子を製造販売したい」という事業構想を聞いた。それがいわゆる10円まんじゅうとの出会いだった。武長さんは「1個10円という発想が面白いし、きっと皆に喜ばれるお菓子になる」と、事業に可能性を感じた。

社長になり、事業に奮闘

 2004年12月、ミックスフーズとケー・イー食品開発の共同出資で有限会社ジャパンフードシステムが設立された。当初武長さんは前述の和食割烹とカラオケ店店長と兼務しながら、10円まんじゅうの製造開発に参加した。翌年2月、千葉県富里市に「和ふ庵」第一号店がオープン。武長さんは開店前の店舗で、まんじゅうを蒸す手順、販売方法、店員の導線を研究したが、実際に店をオープンしてみると店舗オペレーションが上手くいかず、お客さんを長時間待たせる結果になってしまった。「おいしいまんじゅうの開発はできたが、店員の教育が十分にできていなかった」と反省し、同店を徹底的に管理する人間が必要だと感じた。武長さんは渡辺社長に「『和ふ庵』の経営に集中させて欲しい」と申し出て、割烹とカラオケ店の仕事を他者に引継ぎ、同年8月にジャパンフードシステムの代表取締役に就任した。

 武長さんが社長業に専念するようになってから、同社は飛躍的に店舗を増やす。その後2年半の間に、店舗は千葉、埼玉、東京、神奈川に30店舗(2007年6月末現在)できた。「今後はフランチャイズ店舗を含め、全国に500店舗まで増やしたい」と武長さんは夢を語る。

 

(2007年7月20日)

滝岡幸子(たきおかさちこ) 
経営コンサルタント/有限会社ポテンシャル代表取締役 大学卒業後、プライスウォーターハウスコンサルタント(現IBMビジネスコンサルティングサービス)に入社。ABM事業部に所属しABC(活動基準原価計算)による業務改善コンサルティングプロジェクトなどに従事。2002年1月有限会社ポテンシャルを設立。起業家を支援する『ひとり起業塾』を開講し、将来起業をめざす方や起業家を支援する活動をしている。モットーは、起業で自分らしい生活を楽しもう! http://www.potential7.co.jp

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イラスト:トリバタケハルノブ

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